その夜、予想していた通りの帰宅は遅くなるという
ことだった。
 叔と二人で夕食を摂っている時、から電話があっ
たのだ。
 教育委員会の会合と懇親会で遅くなるから先に休んで
くれていい、との連絡だった。
 そしてその時のの声は、いつもとは明らかに違って
いて、妙に弱々しげながら棘のあるような響きがあった。
 「わかったよさん、気をつけて」
 と僕はわざと気づかぬ振りをして、屈託なく明るい声
で返答して電話を切った。
 さんからだよ、夏子。今夜は遅くなるから先に寝て
ろだって。…ね、僕のいった通りだろ」
 僕の目の前で顔を俯き加減にして、黙々と静かに食事
をしている叔に声を投げた。
 叔は無言のままだった。
 僕は構うことなく喋り続けた。
 「昼に僕がいった通り、さんはあのビデオの男たち
に呼び出されて、また恥ずかしい目に合わされているん
だよ。会合なんて嘘っぱちさ。…僕にはいまさんがい
るところもわかってるんだ」
 叔は決して僕の方に顔を上げようとはしなかったが、
声は確実に耳に届いている筈だった。
 「三時過ぎくらいにね、ある男から僕に電話があった
んだよ。誰だと思う」
 僕のその問いかけにも叔からの返答はなかったが、
色白の小さな顔に微かな動揺の表情が出ているのがわか
った。
 「そうなんだよ。昼間ビデオでさんを犯してた男の
一人なんだよ。ほら、最初にさんのおに突き刺した
背の高いのいただろそいつがグループのボス格で山川
って名前だ。そいつとは僕は以前からの顔見知りでね。
…それでまぁ色々あってこんな風になってるってことさ」
 叔の顔の動揺がさらに大きくなっていた。
 夕食を済ませた後も、僕は叔にリビングに残るよう
命令した。
 数日前に猟奇的に叔を犯してから、今日の昼間の卑
猥な出来事も含めて、叔はもう僕という毒牙から逃れ
られない性奴隷になっているという密かな確信が僕には
あったのだ。
 「お待たせ。夏子には今夜の計画とこれまでの事実を
全部話すから聞いてよ」
 食器洗いを終えてリビングのソファにどっかりと座り
込んで、僕は真横で車椅子に静かに座っている叔にい
った。
 叔は細い銀縁フレームの眼鏡をかけた色白の小さく
整った顔を俯けながら、おし黙ったまま膝の上に広げた
新聞に見入っていた。
 叔は白のブラウスに薄茶色のカーディガンを着て、
清楚な花柄模様のスカート姿だった。
 その顔を覗き込むように見てやると、叔は頬と細
い首筋のあたりを、まるで若い小娘のようにぽっと朱
色に染めてさらに顔を深く沈めた。
 「夏子、ここにキスマーク残ってるよ」
 小さくほくそ笑みながら僕は首の下のあたりに指を
伸ばしてつんと軽く突き刺してやると、彼女は尚更羞
恥の表情を大きくして、逃げるように顔を捩じらせた。
 「そうだ、今夜の僕の策略を話しするんだったね。
さんが帰ってくるのは多分深夜だ。若い奴らに犯し
まくられて、精液を膣の中に腹一杯ぶち込まれてきっ
と帰ってくる。いまさんはね夏子。あのグループの
ボスの山川という男のアパートに呼ばれている筈だ。
今夜も三人がかりだといってた」
 僕は煙草の煙りを燻らせながら話を続けた。
 「山川という子と僕の関係も色々あってね。そいつ
学校では相当な乱暴者で通ってるらしいんだが、何故
かこの僕にはすごく従順でいい奴なんだよ。彼との関
係をいま話すと長くなるんで割愛するけど、これも聞
いたら夏子があっと驚くような関係だよ。ふふ、少し
だけいうと、山川のお母さんがね、僕の大学で国文学
の講師をしていて、在学中は僕も何度か講義を受けて
いる、いったら恩師のうちの一人なんだよ。あの頃で
四十代半ばくらいでバツイチで綺麗な人だよ」
 そこで不意にテーブルに置いていた僕の携帯がけた
たましく鳴った。
 「噂の山川君からだよ」
 そういって叔に流し目を送って、僕は着信ボタン
を押した。
 「貴ですかいま上様が来ましたよ。隣りの室
で二人が相手してます。今夜で最後にしてやるといっ
たらのこのこやってきたよ」
 「そうか。じゃいまから楽しんでくれ。それから携
帯ビデオでいい画像送れたら頼むよ」
 「貴の変態ぶりも相当だね。自分の母親が俺らみ
たいなガキに犯されるのを楽しむなんて普通じゃない
よ」
 「ふふ、それはお互い様じゃないのかまぁそんな
こといいから楽しんでくれ。僕は画像楽しみにしてる」
 「わかりましたよ、じゃ」
 それで携帯は切れた。
 「私…も、もう室へ」
 叔が俯いたまま蚊の泣くような小さな声でいってき
たのを、
 「駄目だよ。さんも遅くなるようだし、もっと夏子
といたい」
 といって僕は制止した。
 「夏子、上の服脱いでごらん。下は僕が脱がせる」
 と唐突に僕は叔にいった。
 「…………」
 驚いた表情をして叔は青冷めた顔を上げ、拒絶の言
葉を何度も述べたが、数分後、彼女は苦渋と羞恥の表情
一杯にしてカーディガンに手をやっていた。
 続いてブラウスの前ボタンがゆっくりと外されていく。
 叔の細い肩のあたりの白い肌が露わになる。
 薄い水色のブラジャーが露出する。
 素早く僕は動き、ブラジャーの背中のホックを外して
やる。
 「お願い…灯りを消して」
 露呈された小さな胸を両腕で隠すようにして、叔
哀願の声を出したが、
 「駄目だ」
 と僕は短い言葉で拒否した。
 叔のスカートのホックに手をかけ一気にずり下ろし
た。
 「ああっ…は、恥ずかしいわ」
 叔の下腹部の紙オムツが卑猥な感じで露呈された。
 「綺麗な身体に似合わないから脱いじゃおう」
 そういって僕は叔を車椅子の上で全裸にした。
 そして僕は間髪をおかずに、その車椅子に覆い被さる
ようにして、叔を抱き締めて唇を強く深く重ねた。
 重ねた口の中で叔の歯が戸惑うように力なく開き、
濡れそぼった舌も行き場をなくしたかのようにたわいも
なく僕の舌に絡んできていた。
 激しく重ねていた唇を一時離すと、叔の吐く息が荒
くなっていて、銀縁眼鏡の中の切れ長の目が赤く潤んで
いるように見えた。
 やや垂れ加減で大きくもないがかたちのいい乳房を手
で弄ってやると、
 「ああ…」
 と叔は細い喉首を上げて反応を露わにした。
 乳房の両方を交互に弄りながら、唇から首筋にかけて
唾液に濡れそぼった舌を丁寧に這わせてやる。
 叔の両腕が僕の背中に強い力で纏わりついてきてい
た。
 暫くしてから僕は車椅子の叔の真正面に立った。
 僕の要求を察知して、叔はジャージーに手をかけて
きた。
 ゆっくりと叔は僕のジャージーを下に下ろした。
 トランクスの中の僕のものは見事に屹立している。
 叔の手がその屹立に恥ずかしげに触れてくる。
 叔は僕のトランクスも下ろして、上体を屈めるよう
にして口の中に大きく怒張した僕のものを含み入れてい
た。
 口に含んだまま目を閉じて小さな顔をゆっくりと前後
に揺り動かせていた。
 時間が経過して、僕と叔はソファにいた。
 二人ともに全裸で、ソファに座り込んだ僕の正面に叔
が跨るようにして腰を密着させていた。
 「ああっ…ああ…も、もういく…いっちゃうわ」
 「気持ちいいか夏子」
 「ああっ…ほ、ほんとよ…ほんとにいくわ」
 下から僕が腰を突き上げるたびに、叔は我を忘れた
かのように激しく悶えはしたなく熱い官能の声を上げ続
けしがみついてきていた。
 「ああっ…だ、だめっ」
 間欠的な熱い叫びの声を上げて、叔は僕の肩の上に
がくんと首を折って意識をなくした。
 ソファに叔を寝かしつけ煙草に手をかけようとした
時、携帯が鳴った。
 山川からのビデオ送信だった。
 煙草に火を点けて僕はゆっくりと携帯を操作した。
 板間の室の隅にベッドがある。
 照明は明るかった。
 黒のスーツ姿のが室の中央の小さなガラステーブル
の前に緊張した顔つきで正座しているのがはっきりわか
った。
 山川がの正面に座って対峙していた。
 「私も今日は覚悟を決めて来ています。もうこんなこ
と絶対に止めてっ」
 の声である。
 「わかったよ先生。俺らもこれ以上乱暴なことして退
学なんかになったらやばいから止めてやるよ」
 と山川の声だ。
 「ほんとだよ先生。きっちりと約束するよ。今夜を最
後に先生にはもう手を出さないし心も入れ替える。その
代わり今夜だけ最後の思い出に、先生綺麗な身体をゆ
っくりと楽しませて欲しいんだ」
 「な、何をいってるのあなたっ」
 「これが俺らの最後の頼みだよ、先生。明日からは何
もなかったように真面目になるし、これまでの写真やビ
デオも全部先生の前で消す」
 「そ、そんなっ…」
 「これが俺ら三人の最後の結論だよ」
 そんなやり取りの後、暫く沈黙の時間が続いた。
 「わ、わかったわ…ほんとに約束は守ってくれるのね」
 が俯けていた顔を上げて、正面の山川を睨みつけるよ
うな目をしていった。
 「先生、そこで立って服脱いでよ。もう今夜が最後だか
ら乱暴にはしたくないんだ」
 と山川のしおらしげな声がした。
 が徐にその場で立ち上がった。
 「わ、わかったから早く済ませて…」
 そういってが服を脱ぎ出した。
 スーツの上着とブラウスが床に落ち、スラックスも足元
に落ちた。
 薄い灰色のブラジャーと同色のショーツもは一気に脱
いで床に落とした。
 背が高く剣道で鍛えられたの身体には、年齢相応の弛
みはほとんどなく腰は綺麗に括れ、乳房の隆起も豊かだっ
た。 
 山川ともう一人が素っ裸になるところが写される。 
 全裸になったが山川に指示されるようにしてベッドに
座らされた。
 裸になった二人の男もベッドに上がり、の両側に立っ
た。
 の手が自然なかたちで山川の腰の突起物に伸びた。
 そしてもう一人の男のものにもは手をあてた。
 まるで自然な流れのようにの顔が、山川の腰の固く屹
立したものに近づいていき、唇が静かに開いた。
 の口が山川のものを含み入れた。
 顔がゆっくりと前後に動く。
 もう一人の男がの背中に廻って腰を下ろし、背後から
乳房を弄り出した。
 の口が山川の屹立から離れ、その下の睾丸に長い舌を
這わしていた。
 画面が少し途切れて次には、全裸でベッドに仰向け
になっていた。
 の顔の横に男が両足を開いて座り込んでいる。
 が顔を横向けにして、その男の屹立を口の中に深く
含み入れている。
 の下半身が映し出された。
 両膝を立てて広げられていた。
 の股間に男の顔が埋まっている。
 山川のようだった。
 男のものを口に含み入れたまま、の腰のあたりが妖
しげに蠢いていた。
 「ああっ…だ、だめ」
 男のものを口から放したの声はもうすでに昂っていた。
 山川の舌の責めには激しく反応しているのだ。
 「も、もう…お、お願い」
 の口から声が洩れる。
 「先生、感じてる」
 山川と違う男がの耳元に囁くようにいう。
 首を振っては応える。
 山川がの股間から顔を上げたかと思うと、いきなり
片方の手を彼女の股間の漆黒の中に突き刺すように差し
入れた。
 その手が激しく動くと、
 「ああっ…も、もう…そ、そうよ…感じてるわ」
 の顔の上に覆い被さっている男の顔を両手で強く抱き
締めるようにして、自分から唇を重ねにいった。
 気丈なのあっけない陥落だった。
 それからのは昼間のビデオの時と同じように、自らも
積極的に動き、二人の男の卑猥な責めにも激しく反応し、
四つん這いから騎上位とあらゆる体位に従順に熱く反応し
ていくのだった。
 山川との二人がベッドに寝ている画面に変わった。
 仰向けになっている山川の胸の上に、が寄り添うよう
に顔を埋めていた。
 「先生、最後の思い出になるけど喜んでくれた」
 と山川がの耳元に声をかける。
 は何も言葉は出さなかったが、山川の胸の上で首を大
きく縦に振っていた。
 「俺らと今夜が最後になるけど、先生それで我慢できる
の俺は嫌だなぁ…」
 「わ、私も自信がないわ…で、でも約束したんだから…
それにこんな叔さんなんか嫌でしょ」
 「先生は最高さ。じゃなかったら俺ら襲わないもん」
 「ありがとう…ああっ」
 山川の舌がの首筋を這い回っていた。
 男が一人画面に入ってきた。
 の両足を大きく割ってきた。
 の両足が高く上に持ち上げられ、男の腰がの腰に
深く密着したかと思うと激しく揺れ動いていた。
 「ああっ…いいっ…いいわ…もっと…もっとしてっ」
 の反応は瞬く間だった。
 そしては激しく喘いで果てた。
 それでビデオは終わりだった。
 叔の意識が戻っていた。
 「夏子、いいビデオ配信があったよ。見る」
 「……………」
 「が帰ってきたら夏子にも協力してもらうかもわか
んないから、少し休んだ方がいいよ」
 「………」
 「後でゆっくり話すから」
 僕はそういって叔を解放してやった。
 叔がそそくさと室に引き込んだ後も、僕はソファに
寝転びながら、が帰宅してからの企みをもう一度考え
ながら浅い眠りに入った。
   つづく